ICT教育推進研究所の研究室

ICT支援員→小学校教員が「ICTの効果的な利活用」をテーマに、授業記録・情報教育・情報通信技術(旧ICT)支援員について書いています。

堀田龍也先生特別講演

6月16日(土)、大阪マーチャンダイズ・マートで開催されたNew Education Expo2018大阪に行ってきました。

 

 


その中で、堀田龍也先生による特別講演をご報告します。
題目は「新学習指導要領における教育の情報化の位置づけ」でした。
以下概略です。

近年ネットでは様々な先生による授業の動画が視聴できる世の中になっており、構造的な変化が起きている。
これに対し学校は未だ紙を中心とした配布物や授業展開が続いている。そして行政の縦割りや学校自体の「例年通り」の風潮もあり、これが保護者の都合に見合わず、学校不信を生みかねない。
2008年~2010年にかけて国は全教室に大型提示装置や実物投影機の設置を進めてきているが、もし自治体によってこの水準に満たされていないのであれば、これは10年以上の遅れ。国は地方自治体に地方交付税交付金として多額の予算を地方自治体に交付している。なぜ推進できていないのか?と問いただす必要すらある。

ICTの活用には常設が不可欠。常設すれば即時性は高まり、毎日使うようになる。そのため設置の度合いで活用率は大きく左右される。

日本の教育における先生の指導方法は非常に優秀で、この指導方法を変える必要はない。むしろもっと分かりやすく説明できることが大切で、ICTがこれを実現するものと考える。ICTを用いて現状の浅い学びを深い学びに変えていくことが重要である。
また、日本は平等を求めすぎる傾向で石橋を叩きすぎている。これが世界とのICT環境の遅れを生んでいる。

現代は第四次産業革命に突入しつつある。その中を生きる子どもたちにとって資質能力の育成は重要である。今回の新学習指導要領はこうした時代に対応できる子どもの育成を目指している。
情報活用能力調査で、子どもたちは複数の資料を重ね合わせて課題解決することができない現状があるが、これは大きな問題である。ネット上には主に文章、図、写真、グラフがあり、これらを読み取れないと、情報に流され浅い学びとなってしまう。また調査もCBT形式が主流であり、キーボード入力ができないと回答すらできない(デジタルデバイドにもつながるのでは?)。
ちなみに現在の大学はほとんどがネット化しており、高校までに基礎的なリテラシーを持っていないと履修もできない。
こうした背景から、情報活用能力がないと本当の深い学びは生まれないことから、特に初等中等教育は責任を持って子どもたちの育成に務める必要がある。

プログラミング教育については、あくまでプログラマーを生み出すものではない。義務教育はそもそも「専門性のある人たちへのものさしを作る」ことであり、専門家を育てるものではない。実施については試行錯誤を繰り返し、無理をせず身の丈に合った内容をするべきである。

今回の学習指導要領はICT環境整備に大きく言及している。これは各市区町村が絶対達成しなければならないし、教育委員会は理解を図るべき。国は今回整備指針の策定を行っているが、これは予算措置ができている証であり、まもなく達成できる見込み。

これまでICTに言及したが、もちろん紙の良さも活かしつつICTの良さを活かすことが大事。
これからの教育はネットの存在を利用しつつ、先生が持つ教養や専門性を加え、最終判断を子どもができるようにすることである。今までのような先生の権限に頼る時代ではなくなっている。先生も学びを変えていかなければならない。

ICT=学力向上ではない。あくまでツールである。ツールを使いこなして自分なりの学び方を見つけることが自律につながる。


堀田先生とは今回名刺交換もさせていただきました。大変貴重な講演をありがとうございました。