ICT教育推進研究所の研究室

ICT支援員→小学校教員が「ICTの効果的な利活用」をテーマに、授業記録・情報教育・情報通信技術(旧ICT)支援員について書いています。

小4理科 micro:bitを用いた電池のはたらき

先日、地元小学校で行われたプログラミングを用いた理科の授業を見学しました。

 

 

micro:bitと回路




この単元は乾電池のつなぎ方を変えることで豆電球の明るさやモーターの回転を変えることができることを踏まえ、電流の大きさについて理解するものでした。



用いたツールはmicro:bit、回路の設定にはTFab Worksのユニットを用いたそうです。

 

授業の様子と協議会



授業ではmicro:bitのボタンを使って段階的に電流の大きさを変化させるプログラムを作り、実際に豆電球の明るさを変える活動でした。
既習知識として、micro:bitの最小値が0、最大値が1023であること、豆電球の明るさを変えるには電流の大きさを変える必要があることを振り返り、数値を下げるにはマイナスを使うこと、実際に見た目でも明るさが変わっていることがわかるようにプログラムを組むことが求められました。




先生は課題を「ミッション」と称し、子どもたちにミッション達成を促す指導をされていました。
子どもたちはミッションに対し自分たちなりに考え、結果をワークシートに記していました。
活動自体は2人1組のグループで構成され、プログラムを考えmicro:bitに転送、豆電球の明るさが変わっているかを確認し、概念を理解するものでした。



終了後の協議会ではトライ&エラーの体験、プログラミングは楽しいと実感できたことといった成果に対し、身の回りのものとプログラミングの関連性や教科としてのあり方、準備が容易でないこと、時数の確保といった課題も上がりました。いくつかの課題については次のセクションで私の考えを述べたいと思います。

講評された大学の先生からは、応用的活動は小6の電気単元に相当していたこと、プログラミングによって事象の可視化が可能となること、豆電球を扇風機に置き換えた活動の提案などがありました。

 

所長の感想



今回はかなり思うところがありますので、すみませんが長文になります。

まず見学した学校はプログラミング教育推進校の2年目でもあり、プログラミング教育に対する意識の向上、研究発表に向けて学校としてプログラミング教育をどう進めていくのかが形作られてきているような印象を受けました。
(今回の授業で総務省のSociety5.0の動画を視聴したという活動も素晴らしく感じました)
前回お伺いしたときは実践を中心にしている反面、プログラミングを実施する際の注意点等が欠けている状況でしたが、今回の授業では導入時にフローチャートで活動を流れを表す、答えのプログラムは子どもたちが作成したものを用いるなどの工夫が見られていたのが好印象でした。

その一方でおそらくどの自治体においても課題とされているのが「プログラミングありきの活動」と「時数の確保」ではないでしょうか。
この学校も多分にもれずこの課題が取り上げられました。
そして私も多くの授業を見学したり実践したりしましたが、どうやら学習活動にプログラミングを導入すると、どう頑張ってもプログラミングありきの活動になってしまうものかもしれないと思っています。

あくまでも教科の学びを深めるため、と謳われていますが、果たして本当にそれが実現できるのだろうか。特にビジュアルプログラミングやmicro:bitといったツールを用いる学習活動の場合、それを求めるのは難しいのではないか。
それよりもむしろプログラミング的思考を育成することが求められるのであれば、付箋紙等を用いたアンプラグドの方が先生たちも受け入れやすく授業にも取り入れやすいとも感じています。

無理に単元理解にプログラミングをつながせ、まとめで無理くりに概念として結論づかせようとしても、結局は子どもの頭の中に概念は残らず、楽しかった活動部分しか残らないのではないかと私は危惧しています。

活動自体はとても興味をそそられるものであり良かったのですが、学習目標達成のためになっていたのか、というと疑問が残ります。
まだまだプログラミングの部分が突出している感があり、もっと学習活動の中にプログラミングが埋め込まれていなければならないと強く感じました。

そしてこれは文部科学省を批判するわけではありませんが、下手に教科の中にプログラミングを入れる事はコンピュータ嫌いな子どもを生む原因になりかねない。
それよりも世界各国同様、独立した教科として情報リテラシーやプログラミングを学ばせたほうが効果的ではないか。そのようにも感じ始めています。
まだ開始前ですのでこれ以上は語りませんが、10年後失敗だったとならないようこちらも進めていきたいとは思っています。



また、時数確保については最終的な結論として、系統的な情報活用能力の育成が重要であるとの見解に達しました。

この件は長くICT支援員として何度となく現場に訴えてきたことで、ようやく危機感を持たれたようでした。
結局この単元を実施するにしても子どもの操作技術が不足しており、手順の理解に大きな時間を要したそうですが、もし小1の段階から慣れ親しんでいれば12時間かかった今回の授業は4時間ほどで済んだと大学の先生は講評されました。
算数の計算同様、情報リテラシーも系統立てて進める重要性を、この研究で大きく先生方に突きつけられたのです。

ただ、これは長く地道で大変な活動です。だからといって逃げることがあってはなりません。
子どもたちの将来的な学習活動や実生活を見据えた上での情報活用能力育成のためには

・6年間の学習活動を見通し、系統立てた情報活用能力の年間指導計画策定と実践、改善
・学習活動でICTを用いる場面を意図的に計画、取り入れていく


必要があるのです。


当該校は研究発表を残すのみとなりました。2年間に渡るプログラミング教育への研究を進めたことでどんな成果と課題が見られたのか、大変興味深く発表を待ちたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご参考になれば幸いです。