ICT教育推進研究所の研究室

ICT支援員→小学校教員が「ICTの効果的な利活用」をテーマに、授業記録・情報教育・情報通信技術(旧ICT)支援員について書いています。

【プログラミング教育】6年算数 線対称と点対称

先日、プログラミング教育推進校である都内の公立小学校へ授業見学をしました。

 

点対称のきまりを探そう 



今回見学したのは6年生算数「対称な図形」単元でした。

授業の流れは以下のとおりです。

1.線対称の特徴を振り返り、点対称な図形をどのように描けばよいかとする学習目標を理解する
2.Scratchを用いて点対称な図形を描く
3.点対称の特徴やきまりについて、自分の言葉で表す

Scracthで図形を描画するのは新学習指導要領でも5年多角形が指定されていることもあり、興味深く拝見しました。

授業をふりかえり



授業を見学して感じたことは、

良かった
・Scratchを用いることで、教科書や数学的概念で理解したことを別の視点から比較し理解することができていた
・他の子どもの意見を板書で共有することにより、漠然とした考えが明確化され「そういうことか」というつぶやきが相次いだ

改善
・Scratchが個人作業になっており対話的な活動があまり見られなかった
タブレットを用いても授業支援ソフトがないため、個々の考えが全体に広がらなかった
・先生が線対称、点対称を描くコードを提示してしまった
 (プログラミングの世界は答えが一つではないので模範解答を示すより、子どもたちが出した様々な答えを示すなど他者の考えに触れてほしかった)


授業終了後、協議会にも参加しました。
ここで授業を担当した先生からプログラミングが教科に入ることは辛いと、教科単元におけるプログラミング教育導入の難しさを語っていました。
昨年秋に支援した学校の先生も同様のことをおっしゃっており、現場の先生たちにとって一筋縄では行かないことを改めて実感しました。

また、全体からも様々な意見や質問が上がりました。




最後に講師の先生からはこのような講評がありました。

・これからの図形学習は

(1)図形の性質(概念)から (2)プログラムで描きながら (3)出来たコード手順から 理論を導くことが考えられる。
・従来の教科書等を使った学び方では1つの考え方に留まってしまう。
・プログラミングを使うことで、考え方や捉え方が変わる。
・従来の学び方から少し足を出してみる(学び方の枠にとらわれない)。


こうした意見などを聞いて私はこう感じました。

プログラムを使うことで学び方は多岐に渡り広がっていく。
それにより一人一人の理解の仕方も変わる。
つまり、習得すべきゴールは一つでも、その手法は無限大になる。


プログラミングは本当に使い方次第で深い学びを実現するような感じを受けた協議会でした。
(授業者の先生も講師の先生をお話を聞いて、授業への不安を取り除かれた様子でした)

先生方の不安を取り除くには



最後に思ったことは、どうしても授業が「プログラミングありき」に陥ってしまうことでした。
これは昨年秋の授業もそうでしたが、

プログラミング的思考を育成する授業が求められる ⇒ プログラミングを組み入れなければならない ⇒ 意図的に学習活動に組み入れる ⇒ 学習内容に無理が生じる ⇒ 授業者の先生がおっしゃった「プログラミングを教科に入れるのは辛い」につながる

そう感じました。

しかし、ICT活用の時もそうですが、プログラミングはあくまで思考を促すツールの一つです。
単元によってはプログラミングが適さない内容も存在するでしょうから、必須だからと無理に組み入れる必要はないと思います。

ICTも昔は使うことが前提になっており、45分ないし50分をICTで・・という授業が多く見受けられました。
それも10年かけて徐々に「ICTはツールである」という認識が広がり、授業の5分だけという活用も増えてきました。
プログラミングもそれと同じように捉えればいいと私は思います。

プログラミング教育の目的の一つに「教科の深い学びを促す」ことが記されています。
このことから、より良くプログラミングを教育に活用するには

コンピュータが得意とすることを理解しておく

そして

教科における明確なめあて(学習目標)と学習活動を持った上で、「ここにはプログラミングが活かせそう」といった目線で授業を計画すること

によって自然とプログラミング教育は実践できるのではないかと思います。


他にも、「系統立てた授業の構成がわからない」「教科の評価規準とプログラミング教育の評価規準との兼ね合いが分からない」といった質問も上がりました。
これについては講師の先生もこれから徐々に公表されるものと見解を示されており、時間を要すると思います。
現在は研究校や推進校が先行実施していますが、来年度からの本格実施に向けて一般校も少しずつですがプログラミング教育について考えていく必要はあると思います。


見学を快く了承いただいた小学校様にはこの場を借りて感謝申し上げます。
そして今回の報告がみなさんの参考になれば幸いです。