ICT教育推進研究所の研究室

ICT支援員→小学校教員が「ICTの効果的な利活用」をテーマに、授業記録・情報教育・情報通信技術(旧ICT)支援員について書いています。

ある自治体の改革!一番楽しかった時期

今度は全体的な改革、それもある自治体での改革でした。

まずあらかじめてお断りしておきます。
いよいよ話は中盤戦に差しかかって来ていますが、さすがにいつの頃だったか記憶が怪しくなってきています。これ以降の話はもう何年目の話だったかわからなくなっているので、時系列でなくなっていることをご了承ください。

 

 


基本、ICT支援員は所属する会社と教育委員会が契約することで訪問しています。
その依頼内容は大体契約上可能なものでしたが、この地域ではどうしても1つだけ違反していることがありました。

それは「ソフトのインストール」です。


インストール攻撃との戦い

学校のパソコンは管理上の都合で基本インストールは禁止されています。ただこの頃はまだそのあたりが緩く、特に中学校の先生からよく「悪いんだけどこのソフト入れてよ」という依頼が頻繁に来ていました。新人時代はその件で何度となくリーダと相談電話をしたものです。

そのためいつも要望に対するせめぎ合いがありました。

先生は入れてほしい。会社はダメだと言う。

その狭間に立たされるのが支援員でしたので、この問題はなんとしても解決させたいと思っていました。

ちなみにその当時、支援員と教育行政である教育委員会とが話し合う場はほとんど与えられておらず、あっても1年に1回。それもロビーで30分ほどというものでした。

週1回打ち合わせをしていた前職と比較して、これもおかしいんじゃないかと思っていました。


親会社の営業が動いても相手側が動かない。そもそも当時の担当者はICTに興味関心が薄い方でした(こういう自治体、おそらくかなり多いと思われます)。
この現状を変えたい!少しでも職場環境を良くしようと私なりに訴えたり模索したりしましたが、大きな変化は見られないままでした。


動かない教育委員会が動いた!

ところが数年後、教育委員会に大きな動きが起きました。担当者の交代です。
今度赴任された担当者は今まで担当された方々の中でも一番パソコン等の知識を有しており、教育にパソコンを導入する必要性を強く求めている方でした。
ちなみにこの方は指導主事の先生ではなく、一般の公務員さんです。
その方との再会話はこの記事をご覧ください。

ict-edulab.hatenablog.com

 

その改革はすぐ現れました。
これまでロビーで行っていた打ち合わせを学期に1回の報告会に変更、合わせてその場に保守業者も参加し学校や支援員が抱えている課題をすべて洗い出し改善に向けて取り組む。さらにICTの取り扱いに関するポリシーを策定し、これを遵守するというところまで一気に進みました。

 

あまりの速さに、私を含め担当した支援員は驚き、のちに喜び合いました。
そして支援員の活用にも声を上げていただき、校内での地位がちょっとだけですが上がることもできました。

 

この方が成し遂げた施策は主に以下のとおりです。

 

・パソコンの故障、インストールなどが必要な場合はサポートシートを発行し教育委員会へ連絡後、保守業者が対応。電話での問い合わせは一切受け付けない(過去に連絡の齟齬があったため)
・管理ソフトを導入し、私物USBメモリの使用禁止、CDやDVDの書き込みを申請方式に変更
(後に全小中学校をネットワークで結び、画面上の不具合はリモート対応できるようにした)
・メモリ不足による導入済みのパソコンへメモリを増設(予算を確保し実現)
・支援員と保守業者との連携強化。リーダのみ電話番号交換
・リプレイスによる機器選定に支援員の意見を導入
・情報推進委員会の発足。小中学校の情報担当が年数回研修を行う


行政、学校、業者(支援員)の三位一体がICT活用を促進する

今振り返っても、この時が一番支援員をしていて楽しかったし、充実していたときでした。
未だになぜこのようなことが起きたのかはわかりませんが、多分日頃支援員が頑張っていた結果じゃないかなと思っています。

これは大学の卒論で書きたいと思ったくらいの大きな出来事でしたので執筆を計画していた当時のメモを元にまとめます。

 

ICT活用は「環境」が整って初めて活用されるものだと考えます。
環境とは、ネットワーク、パソコン(タブレット)、周辺機器。そして教員の好奇心
これら一つが欠けると活用は進みません。

 

そのためには

 

行政である教育委員会は財政面での予算確保、講習会等の実施、活用を促す行動を
学校は校内研修などで活用を促進する
業者は環境構築と保守、そして支援員といった人的資源の活用とサポート

 

こうした点を常に考え、

 

「すぐ使える」
「故障が少ない」
「トラブルがあっても対応できる人材保持」 が必要と考えました。

 

こうした「三位一体」で常に連携、協力し合うことでICT活用は推進されるものと私は思います。


自分が長く携わった自治体が実践した活用への改革。それは当時の担当者が去った今も引き継がれ、先生方もその方針のもとICTを上手に活用しています。

 

ICTがもたらす教育への大きな効果と、教員及び児童生徒がICTが使いこなせていないこの現状を、行政機関である教育委員会がもっと危機感を持ち、機材よりも特にICT支援員といった人材を優先的に確保することこそが、活用に向けた一歩ではないかと思っています。


次回は12月23日に更新します。