ICT教育推進研究所の研究室

ICT支援員→小学校教員が「ICTの効果的な利活用」をテーマに、授業記録・情報教育・情報通信技術(旧ICT)支援員について書いています。

通信教育の利点を、学校教育に

臨時休校によって、オンライン学習サイトや大手通信教育会社によるコンテンツの無料開放が盛んになっています。NHKの学校放送ですら、体操の時間を午前中に持ってきているほどです。

 今回の休校措置についての見解はスルーしますが、しいて言うなら私はこれまでの学習スタイル、特に学校教育のあり方を見直すいいチャンスだったと思っています。

 

 

学校式教育が生み出す不登校児を救う学習スタイルは存在する?

 

教室を見回っていた管理職の先生が「せっかく登校できるようになったのに休校したから、これでまた○○さん不登校になるだろうね」と嘆いていました。

 

家庭面の問題や子ども同士のトラブル等で心理的な不安を抱え不登校になる子どもは後をたちません。 しかし子どもの学びの場は必然的に学校式教育です(というか、日本の場合はフリースクールとか存在しても一般化されていません)。

果たしてそれでいいのでしょうか。

そんな疑問が頭に浮かび、今回コラムを書こうと思いたちました。

  

学校式教育と通信教育、その違いとは

 

まず学校式教育と通信教育の違いをまとめます。

(出典は大学テキストを元にまとめた自身のリポート)

 

学校式教育は基本通学で、教師との対面授業になります。

 

学校式教育のメリット

  • 教師から知識を直接得ることができる
  • 年齢的に近い集団のため、団体行動や社会生活を学べる
  • 少ない教師の数で大人数を指導できる
  • 学習機会を得られる
  • 常に一定段階の教育水準を保つことができる

 

学校式教育のデメリット

  • 方法や手段が閉鎖的
  • 時間的拘束が強い
  • いじめや学校嫌いといったトラブル
  • 不登校の子どもの増加

 

一方、通信教育は基本在宅です。

主にITを活用し、対面授業は限られた時間となります。

 

通信教育のメリット

  • 時間的拘束が少ない
  • 学ぶ場所を選べる
  • 学校に行かなくても同等の教育機会が受けられる
  • 好きな時間に学べる
  • 教科書といったテキストのみならずマルチメディアを活用できる

 

通信教育のデメリット

  • 周りに仲間がいない事による孤独感
  • モチベーションの維持が困難
  • 体育や図工といった活動的教科の実施が難しい
  • 人との関わりが少ないため、人間関係の構築に課題が生まれる

 

 つまり、どちらの教育方法においても利点欠点は存在するといえます。

 

遠隔による交流学習は、座学では学べないまさに「総合的学習」

 

もう5年ほど前になりますが、ICT支援員時代に担当した小学校が伊豆大島の小学校とSkypeで結び交流授業を行いました。これは当時の子どもたちに大きな気付きをもたらしました。

自分たちと同じ学年なのに、10数名しかいない子どもたち、海に面した環境のため日々の生活スタイルの違いなどを、画面を通して直接話を聞いて知ることができました。この経験は自分と違う子どもたちへの興味関心の高まりや、多様性を認めるきっかけ作りになったと思います。ただ交流自体はそこで終了してしまい、継続できなかったのは残念でした。

個人的にはこの時間だけでなく、日常的にネットワークを用いて双方をつないだ交流授業をしていたら、子どもたちの交流はさらに深まり、場合によっては互いの土地を訪れるなどの深い関係づくりにもつながったのでは、と回顧しています。

 

同じく僻地と呼ばれる過疎化した地域の学校もネットワークでの交流が必要と考えます。閉鎖的な人間関係になりがちな僻地の子どもたちに、都市部の学校とネットワーク交流することは、人間の多様性や、自分の意思は言葉で話さないと伝わらないといった社会の現実についても実体験させるいい機会だと考えています。

(実際行っていた僻地の学校にも提案したかったんですが、力不足でできませんでした)

 

学校式教育のデメリットを補填する新たな学び、それが通信教育

 

今回の管理職の先生がつぶやいた言葉もそうですが、国はもっと通信による公教育について踏み込んだ一歩を検討すべきではないかと考えています。日本の教育は教育の均等化が前提であり、教育環境の違いや不登校による学びの機会損失は非常に重大な問題です。

 

公教育の場合、やはり同世代との関わりの場を設けることで人間関係や社会生活を学ぶといった役割や意義を鑑みると、学校式教育が最も理想的かつ合理的と言えます。よって基本は学校式教育で進めていく一方で、何らかの心理的問題や課題を抱えて登校できない子どもについては、学校と家庭をネットワークで接続し、動画やテレビ会議を用いた授業を試みるなど通信のメリットを最大限に活かした教育も検討してみたいものです。

 

登校しないと教育を受けられない今の学校制度は、そろそろ時代にそぐわない気がします。

授業=対面という考えも旧態な感じがしてなりません。

画面を通じて話をするだけでも、まるでその場で会話しているような感覚になりますので、対面授業でなければならないとは絶対的に言えないと思います。

 

臨時休校をきっかけに今の学校教育そのもののあり方について、少し考えてみるのもいいのではないでしょうか。