ICT教育推進研究所の研究室

ICT支援員→小学校教員が「ICTの効果的な利活用」をテーマに、授業記録・情報教育・情報通信技術(旧ICT)支援員について書いています。

【活動FB】ICT支援員の使命とは

今回は下記ブログの後半についてご紹介します。

ict-edulab.hatenablog.com

 

 

家庭科の先生が実践したICTを活用した授業


家庭科はICTの活用が想像しにくい教科と思われますが、ネット上にはミシンや手縫い、調理関係など様々な動画がアップされており、手軽にICTを活用する手段が用意されていますので、

 

どの授業の、どの場面で、どのICTを使うか

 

こうした視点で授業を計画されると、活用のヒントが見えてくるかと思います。

 

 

さて、ICTに切り替えたことで授業が変化した事例は多々ありますが、その中で中学校事例は数が少なく大変貴重です。

 

本時はPowerPointで資料を提示したあと班ごとに活動をする授業でした。

以下、活動報告書からです。

 

【目的、ねらい】献立を考えよう
【本時の流れ】ワークブックより朝、昼、夕食の献立を確認。スライドにて献立の料理名と食品群を確認後メニューカードを使い班ごとに夕食の献立を考えワークブックにまとめる。
【支援事項】スライド操作支援、献立作成支援
【活用機器】コンピュータ1台、大型テレビ

 

前半にも語っていますが、これまで行ってきた先生の指導法は教科書をモノクロの拡大印刷で提示して指導するものでしたが、理解が深まらない、生徒の授業に対する意識が低いといった課題を抱えておりました。

 

そこで私に相談があり、PowerPointの基本操作、大型テレビへの投影方法などを詳しくご説明し、先生が授業される日に訪問日を合わせ、バックアップをお約束しました。

 

先生の不安を払拭する「黒子的存在」こそICT支援員

 

私自身、ICT支援員のことを「黒子」と呼んでいます。

 

時には前面に出て操作説明をすることもありますが、その活動の多くはパソコンやタブレットが使えるように整備することや、授業のアイデアを先生にご紹介するなど、もっぱら後方支援。つまり「黒子的存在」です。

 

そのためICT活用に踏み出そうをしている先生に対し、ICT支援員は

 

  • 初めの数回は授業に立ち会いバックアップに務める

 

ことが重要と考えます。

 

初めてのことに挑戦する先生は授業が成功できるか不安をお持ちです。

 

特にICTは突発的トラブルが起きる可能性があるため、先生が操作に慣れるまでなるべくICT支援員がバックアップとしてT2*1の形を取るのが望ましいです。

 

教室で見守るだけでも、先生の不安は大きく減らすことができます。

 

早速大型テレビにPowerPointのスライドを投影すると、生徒の眼差しが一変しました。

 

 まず導入で、生徒の姿勢が授業に集中するようになった、また展開においても活動に前向きでなかった生徒も献立作りに率先して参加するなど、ICTによって全体的に大きく授業のあり方が変化しました。

 

終了後の先生の感想が残されています。

 

【内容】授業の振り返り
【結果】大変良かった。授業が劇的に変わった。子供たちの授業に対する集中度がいつもと違っていた。全体的に作業効率が上がり、授業の進行スピードが上がった。テレビでの投影が思っていた以上に簡単だったのでこれからはどんどん活用していきたいとのこと。

 

一回の授業で、先生はICT活用に対する「難しそう」というイメージを払拭し、もっと活用してみたいとお考えになったようです。

 

ちなみに他の学校の家庭科の先生でも同様の感想をいただいています。

 

【結果】とても良かった。子どもたちがいつもと違い集中できていた。提示することで聞き逃してしまった部分を画面がフォローするなど効果的だった。

【結果】ICTの効果を実感した。普段授業に参加しない子供が最後までしっかり視聴していた。

 

 

先生がICTに対する苦手意識を少しでも減らす。

 

これは非常に大事です。

 

こうした心境に至れないと「やっぱり無理だね」と諦めてしまい、以前の指導スタイルに戻ってしまいます。

 もちろん私も上手く先生の意欲を汲み取れずICTへの乗り換えに失敗した方が多く、その度色々反省しました。

 

そういった意味からして、ICT支援員はとても責任重大な立場ではないかと思います。

 

継続的な支援から先生のICT活用自立へ

 

  • 一番使いやすかったソフトまたはハードについての知識技術を深めさせ、自立に向けた支援に切り替える

 

先生にある程度操作に慣れていただいたら、支援員は自立に向けた支援に切り替えていきます。

 

具体的には

 

  • 適宜授業支援に入りつつも、お一人で実践できるようにあまり手を貸さない。
  • 授業実践に対する相談に乗る程度にする。
  • 知識技術を深めさせ、幅広い活用ができるようサポートする。

 

結果、先生は他校へ異動するまでの約半年間、大型テレビを用いた授業をほぼ毎回実施され、最後の方では相談はあるものの、私の指導を仰ぐこともなく一人で授業を進められるようになりました。

 

それは少々寂しいところですが、ICT支援員の求められる姿はこうした先生の独り立ちを支えることと思っています。

 

訪問最終日、先生は私に「とても勉強になりましたし、操作の自信がつきました。次の学校でもICT、どんどん使っていきますよ!」と力強くおっしゃっていました。

 

その言葉は、まさに先生の「ICT支援員からの卒業」宣言でした。

 

 
いつまでも先生が一人でICTを使えないのは支援員の活用として間違っているのではないかと思っています。

 

先生のICT活用を促し、支援員の力を借りつつも徐々に支援員から卒業できる先生を増やすこと

 

それが、私が考えるICT支援員の使命だと考えます。

 

【関連記事】

ICT支援員卒業後、自らの活動を振り返る「活動FB(フィードバック)」シリーズ。

新たな目線で考察した記事も併せてぜひご覧ください。

【活動FB】技術科だけに情報教育を任せない - ICT教育推進研究所の研究室

 

【活動FB】授業でICT活用の輪を広げよう - ICT教育推進研究所の研究室

 

【活動FB】実施で満足の講習会から先生の心を掴む講習会へ - ICT教育推進研究所の研究室

 

noteではICT活用以外の記事も書いています。こちらもぜひご覧ください。

note.com

 

*1:※T2=ティーム・ティーチング2の略。授業を主体で進める先生に対し、補助的立場で指導する人のこと。