6月8日、東京ファッションタウンで行われたNew Education Expoのセミナーについてご報告します。
マインクラフトによる実践事例報告
今回受講したのはマインクラフト(以下マイクラ)での実践事例です。
マイクラはScratchやViscuitに比べると授業での活用はあまり見られませんが、その内容自体には大変興味がありましたので具体的な内容や留意点などを学ばせていただきました。
今回の事例は高校の部活、小学校での総合的な学習の時間、理科での活用が紹介されました。
まず高校の事例では、自分たちが通う学校の校舎をマイクラで再現するというかなり壮大なスケールを持った活動でした。
忠実な再現のために建築に関する知識や上空写真や施工図などを用いたり、繰り返し作業をプログラミングで効率化したりするなど本格的で、子どもたちも役割分担をしながら校舎を完成させていきました。
しかし校舎をただ巡るだけでは面白味はないので校舎内でドロケイをやる仕掛けを施し、様々なアイテムやダンジョンを組み入れた、まさにマイクラの良さを活かした内容になっていました。
実際に子どもたちと先生でドロケイをやっている様子を見ましたが、これは子どものみならず大人でもワクワクしました。
ここで報告された先生からは
・教員がマイクラのことをすべて知る必要はない
・運動部と同じで概念さえ分かれば、あとは子どもたちが率先して取り組む
という感想をいただきました。
もう一つは小学校の総合的な学習の時間での実践事例で、地域調べをマイクラで再現するというものでした。
今回実施した学年は5、6年でした。3年生の時にわが町を調べる単元がありますが、そこで学んだ知識に高学年で学んだ産業や歴史の知識を加えることで既習知識の再構築を図るものでした。
ここでは取材等を通じて得た自分たちの住む町の現状と課題を抜き出し、未来のわが町を表現するものでした。
高校と同じく地図や道の長さも精巧に再現し、単純作業はプログラミングを用いる工夫がここでも見られました。
その後、作品をYou Tubeで公開したところ再生回数がそれほど上がらないことを知り、いわゆるYouTuberがどれほどすごいものなのかを感じることにもつながったそうです。
報告された先生からは
・どうしてもちょっかいを出す子どもが現れるが、作業を通じて協同作業のマナーやルールを学べた
・マイクラで何を表現するか、なぜマイクラなのか?を考える
という感想をいただきました。
最後の理科での活用は企業との連携を図り、マイクラで理科の電気回路を再現するものでした。
報告された先生からは
・準備は最低限とし、思い切って子どもに任せてみる
・「教わらないとできない」子どもは生ませない
という感想をいただきました。
所長の感想
まず、マイクラを通じた活動自体を俯瞰すると、「個別」「グループ」「全体」といった協働学習の考え方と同じであること、そしてそれは一般社会で言う「プロジェクト」の流れそのものだと感じました。
チームを組み、役割を決め、個人で作業を進めた後グループや全体に広げるという活動を通して、チームで目標達成に向けて取り組むことの大切さと、個人で取り組んだ以上の達成感を味わうことができる素晴らしい活動と言えるでしょう。
支援員時代、中学生からマイクラの凄さを教えてもらったことがありましたが、その時の子どもの目の輝きは今も忘れません。
「自分が作りたい」「やってみたい」ことがあるから、子どもは自発的に、率先的に取り組むのでしょう。
そのため、これだけ子どもたちを引きつけるマイクラを授業で用いないのは、非常にもったいないと思いました。
留意点を挙げるとしたら、先の先生方もおっしゃっていましたが、
マイクラで何ができる?
マイクラで何を表現する?
マイクラで何を身に付けさせるか?
を明確にする必要があると思います。
マイクラはScratchやViscuitと違い、大人数での作業ができることがメリットであり、活動を一つするだけで得られる資質能力は計り知れないものがあります。
ゲーム性が高い印象もあり、ScratchやViscuitに比べ活用頻度が高くないソフトですが、このゲーム性を逆手に取るような授業構成ができれば、これほど強みを持ったソフトはありません。
ぜひこの機会に、マインクラフトについて目を向けてみてはいかがでしょう。
ご参考になれば幸いです。